第二部

(安倍)
この頃頼まれまして、大学の寄付講座、企業が寄付をしてそこで喋るということがございまして、そういう試みに参りますと大体前の方の席が空いているんですよね。今日は前から詰めて頂いて、我々このシンポジウムで喋っている人間にとって、大変うれしい限りでございます。大体前の方が10列くらい空いちゃって、10列目位から学生が座るというのがこの頃の大学で、寂しい限りなんですが。
さて、それでは皆様からのご質問をお受けしたいと思いますが、私がゴシップ丸出しの質問を白井さんに伺いたいんですが。さっき控え室でおっしゃっていた小津さんに関するシャレをご披露して頂いて。原節子さんって今どうしているのかな?

(白井)
元気らしいですよ。何年か前に文春がおばあさんの原節子さんを撮影することに成功したらしいんですよ。ところが、東宝筋が抑えまして結局載りませんでしたね。あの人は生きかたとして、永遠の処女といわれたファンのイメージを壊さない為に、年をとった姿は一切さらしたくないようです。一映画好きとして、贅沢なことを言いますと往年の美女スターがNHKの朝の連続ドラマでお婆さんやったりなさると、夢が壊れちゃったりするんですよ、こっちのまったく勝手な言い分なんだけれど。やっぱり原節子さんていうのはね、天鈿女命が岩戸に隠れちゃったように、出てこない。

(安倍)
ということだそうです。さっきの小津監督のシャレを。

(白井)
ああ、あれですか。小津安二郎の映画が海外で非常に評判になった時、あるフランスの評論家が小津の映画を見て「彼はオズの魔法使いだ」と言ったというんです。

(安倍)
なかなか洒落た映画評論家がフランスにいるもんだと思いましたけども、原節子はやはり自分のイメージを大切にするために北鎌倉かどこかに。

(白井)
原さんも、もうかなりのお年でしょうけどね。

(安倍)
昭和というのは、段々遠くなっていきますが、あまり遠くにならないように、昭和を忘れないために時々この会をやってまいりたいと思います。それが日本の芸能界の未来の糧になれば幸いです。

では最後に、森繁久弥さんが歌った「銀座のすずめ」を会場のみなさんと聞いてトークショーを終了いたします。

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