一般財団法人 渡辺音楽文化フォーラム
渡辺晋賞 第20回 記念企画
これから日本のエンターテインメントを担う
若きプロデューサーたちへ
~渡辺晋賞受賞プロデューサーからのアドバイス~
一般財団法人 渡辺音楽文化フォーラム
渡辺晋賞 第20回 記念企画
~渡辺晋賞受賞プロデューサーからのアドバイス~
2026.2.12
音楽・芸能の発展に貢献し大衆に希望を与えた人を顕彰する『渡辺晋賞』。昨年第20回を迎えたことを記念して、これまでの受賞者に『これから日本のエンターテインメントを担う若きプロデューサーたちへ』と題して、次代を担う若き才能たちへの応援と後押しの一助とするべくインタビュー企画がスタート。稀代のプロデューサーの目に現在のエンターテインメントシーンはどう映っているのか、そして次代を牽引するプロデューサー、さらにエンタメシーンを目指す若い人達に向けてメッセージを届ける。
シリーズ第5回は『第6回渡辺晋賞』(2011年)を受賞した作曲家・三枝成彰氏。長年にわたって音楽界の発展に貢献したことが評価され、2007年に紫綬褒章を受章した他、令和2年度には文化功労者として顕彰された。オペラやオラトリオ、協奏曲、映画・テレビ音楽など、ジャンルを問わず現代音楽界の第一線で幅広い創作活動を展開。日本の音楽史において「芸術」と「大衆(ビジネス)」、そして「個の表現」と「社会」的啓発も強く意識した行動でその全てを結び付けた、芸術家という枠組みには収まらない稀有なクロスメディア・プロデューサーともいえる。そんな三枝氏にロングインタビュー。クラシック音楽界の未来、そして創作への執念までを縦横無尽に語ってもらった。
——三枝さんは2011年に第6回「渡辺晋賞」を受賞されました。その受賞スピーチでは「プロデューサーという概念を持っていなかった」とおっしゃっていましたが、改めてその真意をお聞かせください。
三枝 私はクラシック畑の人間なので、もともと「プロデューサー」という言葉に馴染みがなかったんです。クラシックの世界では、プロデューサーといえば海外アーティストの招聘を行う興行師のことであり、日本の作曲家やアーティストを「育てる」という概念は希薄で。ですから、そんな自分が大プロデューサーの渡辺晋さんの名前を冠した賞をいただくのは非常に意外で、申し訳ない気持ちだったことを覚えています。
——お祝いに駆けつけた前年の受賞者である作詞家の秋元康さんが「好きなもの、信じるものをやっていくうちにプロデュースになっていくものだと思う。本来、プロデュースというのはそういうもの。三枝さんこそ、渡辺晋賞にふさわしいと思う。三枝さんは周りをプロデュースしていて、多くの人々が刺激されて育っていく」とおっしゃっています。
三枝 自分ではそういう意識はなかったけど、確かに私は自分の夢=オペラを実現させるため、一本あたり数億円という上演費用を集めるために、人を巻き込んできました。資金集めは本来作曲家の仕事ではありません。でもプロデューサーがいないから自分でやるしかなかった。作曲家がプロデュースまでやるのは邪道といわれるかもしれないけれど、そうしなければ私の夢は形にならなかったわけです。本当に人に恵まれ、チャンスに恵まれたラッキーな人間だと思います。
——「渡辺晋賞」は渡辺プロダクションの創業50周年を機に創設されましたが、2025年に70周年を迎えました。そのDNAを受け継いだワタナベエンターテインメントも、同年に25周年を迎えています。この両社についてはどんな印象をお持ちですか?
三枝 渡辺プロダクションは創設当時、非常に画期的で革命的な事務所でした。渡辺晋さんは音楽という分野だけでなく多様な才能を発掘し、育ててきました。日本のポピュラー音楽や芸能を根幹から牽引した方。そして時代を読む力が強く、若手が伸びる土壌を本気で作ろうとしてきた事務所です。今のワタナベエンターテインメントにも「流行に流されず本質を育てる」姿勢を持ち続けてほしい。芸能も音楽も、世界基準の感性と日本固有のメッセージの両方を磨き、未来につなげてほしいです。そしてこれからは徹底した国際化を図るべきです。
——詳しく聞かせてください。
三枝 日本のマーケットは既に制覇しているのですから、次はアメリカ、特にハリウッドやロンドン、パリに拠点を構え、世界的なプロモーターを目指すべきです。クラシック界ではコロムビア・アーティストというマネジメント会社が、世界の指揮者の90%ぐらいを抱えています。そういう時代が日本にも来るべきで、ワタナベエンターテインメントはアジアから初の本格的なインターナショナルマネジメント会社になれると思うし、世界市場で戦う覚悟を持つことが、次の70年を切り拓く鍵になるのではないでしょうか。