一般財団法人 渡辺音楽文化フォーラム
渡辺晋賞 第20回 記念企画
これから日本のエンターテインメントを担う
若きプロデューサーたちへ
~渡辺晋賞受賞プロデューサーからのアドバイス~
一般財団法人 渡辺音楽文化フォーラム
渡辺晋賞 第20回 記念企画
~渡辺晋賞受賞プロデューサーからのアドバイス~
2025.6.12
——改めて賞が決まるまでの過程を教えてください。そしてそれは20年前から少しずつ変化しているのでしょうか?
渡辺 渡辺プロダクショングループ各社の社員・役員からの推薦を起点に、評議員会、理事会、選考委員会で喧々諤々の議論を重ねて決定します。「プロデューサーとは何か」「どこまでがプロデュースか」という根本的な問いを毎年繰り返し、時代や業界構造の変化に合わせて定義をアップデートしてきました。
——やはり喧々諤々の議論が繰り広げられているんですね。
渡辺 本当にいい意味での喧々諤々で、それは私や、理事の渡辺万由美(㈱トップコート代表取締役)にとって、とても学びの多い尊い時間です。だからこそ候補者の方のお仕事の内容を深掘りし、その価値の検証を色々な視点、本当に優れた選考委員と理事の方々の視点で検証していきます。その時間が私達にとって毎年本当に勉強になっていて、私達が一番育てられた場所であり、時間だと思っています。
——受賞者に求められるもの、選考の決め手になるものを教えてください。
渡辺 受賞者は、単なるヒットメーカーではなく、時代を象徴し、業界の未来に示唆を与える存在であることが重視されます。ヒットした作品を作った方を顕彰するだけではないんです。
——選考委員の方も多士済々の顔ぶれで、色々な意見が飛び交いそうです。
渡辺 選考委員の方々の視点も多様で、それぞれの立場から「プロデュースとは何か」を深く議論します。毎年そのテーマを繰り返し話しています。この喧々諤々の議論が、賞の価値を高めていると感じています。
——今年、記念すべき第20回目の「渡辺晋賞」の受賞者は宇野康秀さん(U-NEXT HOLDINGS代表取締役社長CEO)でした。一番評価された点は?
渡辺 外資系プラットフォームが席巻する中で、日本独自のプラットフォームを作り、地上波と連携して、新しい仕組みを作り確固たる地位を確立しました。日本のクリエイターやプロデューサーが活躍する場を守り、発展させるための挑戦を続けていることが決め手となりました。今後はMAX(ワーナー・ブラザース系配信サービス)を通じて、国内のコンテンツを世界に向けて配信することも発表されていますが、日本発のコンテンツの更なるグルーバル展開が期待されます。エンターテインメントとテクノロジーで未来を切り開いて、多角的に事業展開する同社には、日本のエンターテインメントが独自に発展するためのプラットフォーム力が大いに期待されています。渡辺晋が目指した「日本のエンターテインメントで世界の人々を笑顔にする」との思いを体現するかのような、宇野さんと同社の活躍は、日本のエンターテインメント産業の育成にとって非常に重要です。大阪有線時代に厳しい局面を迎えたという歴史もみなさん知っています。でも一度失敗を経験をされている歴史も含めて、宇野さんに学ぶべきところがあるという視点に全員がなり、宇野さんに決まりました。
——「プロデューサーとは?」という議論が毎年テーマとしてあがるとのことですが、ミキさんご自身が考える「プロデューサー」とは?
渡辺 本当に難しい質問ですよね(笑)。100人いれば100通りのプロデューサー像があるように、プロデューサーの役割は多様で、100人いれば100通りのプロデュースがありますが、やはり自分のオリジナルを作り続けること、時代の流れを読みながらも本質を見失うことなく前に進める人ではないでしょうか。そして何より大切なのは「人を笑顔にしたい」「希望を届けたい」という、根源的な情熱を持ち続けることが大切だと考えています。
——ミキさんも含めて選考委員の方と、受賞対象者とは仕事上でもプライベートでもお付き合いがあるというパターンもあると思いますが、特によく知っている方が対象であればあるほど、少し後ろに下がって見る、俯瞰で見つめ直すということが大切になりますね。
渡辺 私は最初からそうあるべきだと思って向き合っています。でも喧々諤々意見を戦わせれば戦わせるほど、数年経って、すごく素晴らしい方たちに受賞していただいたな、その年その年の時代を象徴する方に受賞していただけているなって、それこそ“引き”で見ていると、見えてきます。授賞式で受賞者の方のスピーチを毎年聞かせていただいていると、ひとつ一貫していることを感じます。それはこの賞が、裏方として生み出したことに対して光を当てられたということで、さらに使命感がご自身の中で生まれ、もっといいお仕事をしていかなければいけないという覚悟のようなことを言葉にしていらっしゃいます。その言葉を聞かせていただくことがとても幸せですし、これまで受賞してくださった方々が、この賞を大きくしてくださったと思っていますので、本当に感謝が尽きません。