顕彰事業

第8回表彰 授賞式の模様:三谷幸喜さんの受賞挨拶

 本当にどうもありがとうございます。三谷幸喜です。こういう会場だとは想像していませんでした。結婚式場みたいで・・・。ここに立った瞬間、ものすごく沢山の来客がいる! とビックリしました。でも、よく見たら後ろが鏡で、皆さんが映っていたんですね。だから、来場者は見た目の半分ほどだと分かって、少しホッとしました。

 僕自身は、作・演出家と思っていましたので、自分がプロデュ−サ−と見られている事に今回初めて気が付きました。実際に言われたことはありませんが、「あなたには、実は双子の弟がいる」と母親に言われたような衝撃です。その様な感覚でこの賞を頂きます。本当に僕は、自分がプロデューサーであり、プロデュース的な仕事をやっているという認識がありません。ですから、実際に僕と一緒に仕事をしている演劇・映画・TVのプロデューサーの方々に、これからどういう顔で接すれば良いのでしょうか。その辺の僕の立場も少し考慮して頂きたかったとさえ思っています。きっと、そういう方々が支えてくれているから、僕がここに、今いるのだと思っています。

 振り返りますと、ずっと好きな事をやってきました。 子供の頃、アメリカのTVドラマ、特に刑事コロンボが好きでした。そうしたら、僕よりも刑事コロンボが好きな石原隆さんというプロデューサーと出会い、コロンボのような知的エンターテイメントを日本のドラマでも出来ないかと相談して始めたのが、「古畑任三郎シリーズ」です。そして、子供の頃から人形劇が大好きで、「ひょっこりひょうたん島」等を見ていました。一人っ子ですから、自分でフィギュアを集めて一人遊びをしていましたが、それが高じて、NHKの「新・三銃士」という人形劇をやることになりました。さらに去年は、文楽にまで手を出してしまいました。もう人形劇ファンとして登り詰めたくらいの感じになっております。大河ドラマ好きで、中でも新撰組が大好きでしたが、まさか自分が大河ドラマで「新選組!」をやることになるとは思ってもいませんでした。また、今年公開される映画「清須会議」は、戦国時代の物語です。その原点は、「柴田勝家」「丹羽長秀」といったすごく地味な戦国武将が好きだというところにあります。おそらく、僕の世代だと、子供時代に好きなキャラクターの似顔絵を描いたとしたら「サイボーグ009」や「おそ松くん」だったりするのでしょうが、僕は、教科書の裏に「柴田勝家の似顔絵」を描いていた少年でした。それが、柴田勝家主演の映画を作ることになったのです。好きな事だけをやり続け、それを仕事にできているのですから、とてもラッキーだと思っています。

 実は自分の中で心掛けていることがひとつあります。それは、出来るだけ偉くならない様にしようということです。権威的にならないようにとずっと思っています。いわば自分の好きな事を、他人に押し付けて作品にしている訳ですから、僕自身が偉ぶってはいけないということです。例えば、映画の現場では、俳優さんを始めエキストラの方には、敬語で話すようにしています。もちろん、スタッフの皆さんに対してもそういう風にしているつもりです。有難いことに今まで、いろいろな賞を頂いているのですが、僕の公式プロフィールには、受賞歴を載せていません。そういうものは、自分の心にしまっておくもので、あまりひけらかすものではないし、勲章をぶら下げて歩く様なことは、僕の柄じゃないと思ってそうさせて頂いています。だから、関係者の方には申し訳ありませんが、「渡辺晋賞」も僕の公式プロフィールに載ることは無いと思います。しかし、今日一日は思いっきり自慢したいと思います。

 三谷幸喜は「渡辺晋賞」を頂きました。コメディが大好きで映画が大好きな僕が、クレイジーキャッツさん主演の映画「無責任シリーズ」を作った、偉大なるプロデューサー渡辺晋さんの「渡辺晋賞」を頂きました。ありがとうございます!!

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